お洒落な燭台やスペインで見るような窓飾り、赤さびたオブジェまで。
新大宮商店街の大きなアクセント
店前にある金床がその存在感を主張し、店の鉄製建具も自らの作品という。
店の中には黒光りする鍛冶製品の数々。
絵描きを夢見た少年が導かれながら鉄の道を歩む
京都出身で成安造形大学立体造形クラスの1期生として、鉄の師匠と出会う。石、樹脂、鉄等さまざまな素材を扱う中で鉄が最も楽しく、鉄の作家となることを目指す。卒業後、昼間は黒壁で吹きガラス、モザイクを作りながら、夜は、長浜の母の実家の納屋をアトリエとして鉄の作家活動を行う。黒壁での経験は現在の作家活動に役立つ(鉄とガラスのコラボ)。3~4年すると、成安造形大学の非常勤のオファーがあり、5~6年、3足の草鞋を履く生活を送る。
鉄の作家としての自立
15年余前に滋賀県伊香立の山中にアトリエを構える。かつては溶接を使いながら現代彫刻で動物を作っていたが、スペインの鍛冶屋と知り合い、鍛冶仕事を教えてもらった。徐々に自由度の高い鍛冶仕事の面白さに目覚める。伊香立では炉を構える。一般の住居のフェンス、衝立を鍛冶仕事で作るが、オブジェも少なくない。京都府立植物園の噴水のステンレス溶接のオブジェ、長浜の噴水のオブジェ、ヤンマーミュージアムのオブジェ、オーパの裏寺側の非常階段の装飾パネル、ガラス照明器具、南禅寺近くの瓢箪の行灯など、鍛冶仕事を中心にしながらそれ以外の仕事も楽しく取り組む。黒壁は離れたが、今も作家と成安造形大学及び滋賀県立栗東高校の彫刻クラスの非常勤講師の3つの草鞋を履く。
同じ鍛冶作家の夫人との出会い
愛知の工業高校卒業後、授業の鉄の造形が面白く、鉄工所に就職し、8年間務める。当初は事務、デザインだが、鉄への思いが絶てず現場に入り、溶接などを覚える。昼休み等空いた時間を使って作品作りをさせてもらう。その鉄工所は、輸入したパーツを組み合わせて、溶接していた。ロートアイアン(錬鉄)を知りたくて師匠に出会う。鉄を叩いて、オブジェを作ることができることを知り、弟子入り。教えてもらえるが、仕事は自分で取ってくる塾のようなところ。
4~5年前に、夫人の師匠が主催する鍛冶仲間「鍛鐵組」のイベント(年に数回、一般の方に鍛冶仕事を体験してもらい、本物の鍛冶仕事を知ってもらう)で出会う。
工房と店を構える
3年前、結婚が決まった時を同じくして、大学時代の先生から木工の資材置き場とされていた比叡平の工房を譲ってもらった。夫婦二人の作業場に足りる広さがあった。
2年前に、今の店の近くん住む友人の家に来た際、偶然に貸家と出ていた店を見つけた。京都で店舗付き住居を探していた。仕事が忙しく店の改装が遅れていたが、2年更新のお知らせが来て慌てて改装にとりかかる。全部自分で工事を実施。作品をかけられるように壁はべニアを張って左官をした。鉄製建具窓は自作の作品。出入り口の鉄扉も作成中。平日は、工房で製作。土日に店を開ける。もともと、工務店や建築士、庭師からの依頼、紹介が多く、客から直接依頼が少ない。店を設けると直接客と話ができ、お客様のほうから現物を見ながら企画の提案がいただけるし、依頼されたものをイメージしていただける。また、路面店を持つことにより信用力をつけることができる。
ギャラリースペースとしての店の展開
当面は、今の仕事を誠実に進めながら、今後は、お店をギャラリースペースとして活用していくことも検討したい。他の鉄作家だけでなく、アクセサリー作家との企画展示も検討したい。また、簡単なワークショップでファンを広げていきたい。先日も新大宮まつりで、スプーンを板から叩いて作るワークショップを行った。今後も、企業などからのイベントとしてのワークショップの要請があれば対応していきたい。