新町商店街 今宮通りを少し下がると

「京都で一番小さなつけもの屋」という看板が目を引く

小さいながらご近所だけでなく多くの方に愛される名店である

京つけもの 新町 三宅の創業

「京都で一番小さなつけもの屋 新町 三宅(今は、「京都のちいさなつけもの屋」と変更」は、今から90年ほど前、昭和10年位の創業とのこと。当時、この界隈は戦前区画整理が出来上り、次々と新しい町家が建設されていた頃である。先見の明のある大女将の先代の義父が、この町の発展を見越してこの地に創業した。先代は三重県のご出身で京都に出てきて漬物屋さんで修業をされてからこの店を創業されたとのこと。そして、当時、鞍馬口通りにあった市場の中にも店を出しておられた。

大女将のご主人は高校時代からこの店を継がなければならないと思って店の手伝いをしておられ、先代の女将も熱心な人で先代を手伝い、大女将のご主人の3人でお店を切り盛りされていたとのこと。お店ができてから30年ほど経った頃、大女将が24歳で嫁いで来られてからちょうど60年目になる。大女将が嫁がれてからは、先代女将と、大女将夫婦の3名で、漬け込みから包装、出荷、販売まで家族だけでお店を守ってこられた。当時、新町通りには、二つの市場を始め多くの商店が立ち並んで大勢のお客様でにぎわったとのこと。当代のご子息がお店を手伝い始めて20年程経った5年前にご子息に3代目を譲られたが、今も、当代女将のお嫁さんと一緒に現役で店に立ち続け、にこやかにお客さまを接遇されている。

店名に新町と名付けたのは、やはり新町通りにある店ということを知っていただきたいという思いからであった。当時、大女将のご主人の知人のお客様から、お店の名前を書いていただいくなど、いろいろとアドバイスをいただいていた。その方から、家族3名だけで店を続けているので「京都で一番小さなつけもの屋」というネーミングにしたらどうかと提案をいただいたとのこと。一時は、2つの市場にも店を出し、ご子息の参観日に行く暇もなく良く働いた。さすがに、外の店を切り盛りすることが難しくなったので、一時期、市場の店は閉めて新町の店だけにした。

けれども、市場の店に通われていた北の方のお客様のご要望もあり、20年近く前に、ご主人の妹さんに手伝ってもらって、やはり新町通に北店を出して販売することとして今日に至っている。

一子相伝の京つけもの

あっさりしているけれども旨味のある三宅の漬物は、辛い漬物はだめだという信念をもつ先代の考案である。先代がなくなってからは、それを見てきた先代女将と大女将のご主人がその味を守ってきた。そして今では、それを見てきた当代がその味を守っている。まさに一子相伝の味である。

時代の変化とともに、お客様が漬物に求めるものが変わってきた。お茶漬けでサラサラといただくものからサラダ感覚になり、お酒の軽いアテとして食べられるようになるにつれ、少しづつ味も種類も変化してきている。

先代女将の時代から、女性陣が味見係となり、三宅の味を守ってきている。塩漬けにしたものを洗って、本付けにするという工程を経て漬物になる。その塩漬けが終わった段階で、塩加減を見極めるのが女性陣である。今でも、大女将、当代女将と大女将の義妹の3人が塩漬けの都度、一樽毎に味見をして、塩辛いものはやり直して、三宅の味を守っている。

そのため、三宅の漬物は一度にたくさん漬けられない。店の奥の工場で少しづつ漬け込み、売れたらまた漬けるというやり方で、いつでも安定して美味しい漬物の味を守っている。

家族の協力があればこその味であるが、大女将はお客様のご協力であるという。その都度、常連のお客様から評価をいただきながら、工夫を続けてきている。当代の女将にもその精神は引き継がれている。

こだわりの漬物

一押しの商品は「きゅうり生姜」で、胡瓜の真ん中に穴を空けて、そこに生姜を細切りにしたものを差し込んだ商品である。これを開発した当時、美容・生活アドバイザーとして執筆・講演活動で広く活躍していた佐伯チズ氏に、佐伯氏の友人の三宅の常連さんが「きゅうり生姜」を土産に持参したところ、「美味しい」と言ってお電話をいただき、お店にも来ていただいた。そして出演されたテレビで紹介していただいたところ、店の電話が鳴りやまないほどの大きな反響があった。そのことがあってから、お店が繁盛するようになり、「きゅうり生姜」が人気商品となった。

数年前にも、俳優の滝藤賢一氏がテレビで紹介していただき、また、反響があった。それを契機に「きゅうり生姜」以外の漬物も買っていただくようになり、うれしいことである。

漬物の原料となる野菜類は、基本的に地物を中央市場で仕入れている。滋賀県の日の菜や長野の白菜など、地方の方がおいしいものは、その地方のものを使っている。

奈良漬やちりめん山椒などは美味しいものを厳選して仕入れて販売している。近年の物価高で、商品も高くなっているが、価格に合わせて品質を下げるとお客様は買っていただけない。品質にこだわるお客様に支えられている証でもある。

大女将のご主人は、三宅には三宅の味があるので、たとえ、お客様が少なくなっても、三宅の味を落とさないように頑張らないといけないと家族を励ましている。当代のご子息もその気概で商いを続けている。

新町通での商い

新町商店街の人通りは昔とは比べるべくもないけれども、この新町で頑張っていこうとしている。隣の和菓子の日栄軒さんとも、「この新町商店街には良いお客さんがついてくれているので、頑張っていこう」と話をしている。新しい店もできているが、日栄軒さん、呉服の木村さん達と励まし合いながら続けている。

3代目となるご子息も当代となり、若女将も一生懸命に頑張ってお店の中心的存在となっており、大女将自身はサポート役になっているとのことであるが、まだ、接客は第一線である。

二人のお孫さんにも恵まれ、普段は東京で暮らしながら人手の必要ときには帰ってきて、手伝いながら味見をしたりメモをしたりしているとのことで、4代目も期待できそうである。

ご近所のお客様に支えられてありがたいとのことである。また、東京をはじめとする遠方の方もお店に来ていただいたり、ご注文をいただき、これもありがたいとのことである。

そのお客様のためにも、当日の朝に樽から出して、その日に売る漬物を袋詰めして、美味しい状態で提供している。

味見役の女性陣は味には厳しく、率直に意見交換をしている。かつて、いろいろとアドバイスしてもらった知人から「目加減、手加減、塩加減」と教えてもらって、心がけてきている。目で見て、手で触って、舌で味わって、良い加減の漬物をつけるという意味である。

大女将に会いに来るお客様も少なくなく、「面白く、楽しく、そして味はしっかり」を心がけ、大女将60周年を楽しく過ごしているとのことである。

ご主人が「家族が、毎日笑顔でにこやかに仕事をしていたら漬物も美味しく浸かる。家族で角を突き合わせているお店はあかん。味にも出るし、お客さんにも伝わる」と言っておられたとのこと。

「京つけもの 新町 三宅」は、そのご主人の言葉を体現している、また来たくなる、また会いたくなるお店である。

基本情報

■ 京つけもの 新町 三宅

  • 住所   〒603-8173 京都市北区小山下初音町35-5
  • 交通   京都市営バス「北大路新町」より徒歩7分 他
  • 定休日  本店・水曜日、北店・月曜日(最新情報はHPよりご確認ください)
  • 営業時間 10:00~18:00
  • URL  https://www.kyotopickles-miyake.com/