左官職人が住んでいた昭和初期型の典型的な京町家 六壺

住居兼事務所、コミュニティスペース

多様な職歴

みつひろ氏は、現在、六壺~heart house~で町家暮らしを楽しみながらフリーランスとして企業の人事・採用支援や1on1コーチング、キャリアカウンセリング・キャリア教育、ホームページ制作などを行っている。

東京の新宿に生まれ、大学在学時ベンチャー企業立ち上げの参画や、キャリア教育系NPO活動への従事、中国・上海に広告代理業としての駐在、IT企業での人事業務を経て、京都のゲーム会社に転職し、人事部門の立ち上げを行った後、2015年にフリーランスとして独立する。

えりこ氏は神奈川県のご出身で、大学卒業後は、転職紹介や求人などの人材会社の人事部門で勤務した後、2019年にフリーランスとして独立する。

六壺との出会い

京都市内でゲストハウスを営む方が「六壺(ろっこ)」と名付けて一棟貸の宿泊施設として運営を始める。奥庭の広さが六坪であったことから命名されたとのこと。庭をつぶして部屋に取り込む改造がなされることが多い京町家にあって、きちんと残された庭である。

だが、コロナ禍でお客様が激減して経営が難しくなり、シェアハウスは閉業。その後ご縁が巡ってきて、みつひろ氏が六壺を一般住居として居住するとなり、東京に住んでいたえりこ氏と結婚を機に一緒に暮らすこととなる。二人とも「いつか古民家に住みたい」という漠然とした夢があったこともあり、思いもよらないご縁で夢が叶うこととなる。

クラウドファンディングに挑戦

一棟貸しの宿泊施設としてオープンする際にリフォームがされていたので、建物の状態は良かったが、当時使われてなかった蔵を中心に傷んでいるところがあり、その改修をするためにクラウドファンディングに取り組む。

「近年多く解体されている京町家を、誰もが安らげるコミュニティスペースとして守り、次世代へ繋げる」というコンセプトで挑戦した。当初、65万円の目標であったが、最終的に315名の方から220万円余の調達に成功し、多くの方々の共感を得ることができ、更なる改修を実施した。

土間の通り庭の台所や中庭など町家暮らしを楽しみながら、夫婦ともにフリーランスの事務所としても活用されている。またご夫婦の友人が関西外の方が多く、色々な方が京都旅行ついでに訪問してくるようで、「田舎のおじいちゃん、おばあちゃんの家に居るみたい」「とてもリラックスできる」と言って喜んでいるとのこと。

やまもと夫婦の事業について

みつひろ氏はかつて人事をやっていたこともあり、中小・ベンチャー企業の採用のお手伝いや企業の「人」に関するサポートをする仕事が多い。

えりこ氏も企業の経営者・マネジメント層の方々との1on1セッションや社員のパフォーマンスが上がるような組織開発の支援をしている。

今の経営者やマネジメント層は人に関する悩みが多い。採用のことであったり、職場の人間関係であったり、退職者が多く出る問題などである。そして、社内には、悩みや思いを吐き出せる人がいないケースが少なくない。利害関係があったり、本当のことは言えない環境であったりするので、第三者として、サポートし、伴走するという仕事になる。価値観や働き方の多様化が進む昨今、組織の運営は難しくなっていることを実感する。やまもと夫婦のような社外から「人」に関する伴走支援をするというのは、組織内に新たな変化が生まれるきっかけになるのかもしれない。

やまもと夫婦のこれからの生き方について

これからの生き方について、ご夫婦で模索をしている。今は、食べ物や田んぼ・畑に関心を持っている。日本の食料自給率や安心・安全な食品ということだけでなく、コミュニティの形成、活性化を考えると、これからの日本の重要な課題である。

やまもと夫婦はこの京都市北区で空き地や耕作放棄地などを活用して、地域住民の皆さんと一緒に自然農の畑・田んぼをやりたいという思いがある。実際に東京・世田谷区に「タマリバタケ」という世田谷区の公有地で「農」をテーマにした地域交流の場づくりを通して環境意識や防災意識を高め、持続可能な地域づくりに貢献することを目指した場があり、地域の交流や活性化だけでなく、環境意識の向上や自然との触れ合いによる豊かな人間関係の形成にも貢献する活動で、このタマリバタケのような活動を北区でも実践したいとのこと。

地域の活性化のためには顔と名前が一致して会話が生まれていくことが大事なことであり、少しずつ地域で繋がりができつつあるが、今後も地域の方との交流が増えることを楽しみにしている。