鞍馬口通にはユニークなお店が多い
さらさ西陣に並んで藤森寮がある
いろいろな工房や雑貨の店が入る
藤森寮の始まり
鞍馬口通沿いに築90年ほどの町家「藤森寮」がある。
元は、学生のアパートだった。しかし、当時、立命館大学が草津に行ったり、同志社大学が京田辺に行くなど大学が京都市から出ていく動きがあり、学生が少なくなってきた。
それで、平成10年頃、家賃を安くしてモノづくりをする人を募集したら入居してくれた。元々、アパートだったので、小さな水回りも付属しており、家賃も安かったのでモノづくりをする若い人のニーズに合致したものと思われる。
藤森寮は、鞍馬口通に面した北棟と智恵光院通に面した南棟が中庭を挟んでL字につながっている。通り庭にはタイル張りのおくどさんや急傾斜の階段があり、レトロな空気に包まれている。
御主人にとっては、窮余の一策であった。空けておくのももったいないので、家賃を安くし、現状有姿で多少の改装はやっていただいて結構という条件で募集すると、うまく需要があって、アトリエや教室、ギャラリーなどが入居した。
入居者コミュニティの形成
一人が入居するとその知人、友人を誘って入居してくれる。御主人が募集をすることなく、口コミで次々と入居者が決まっている。
今でも、ガラスや金属のアトリエ兼教室やショップが入居しており、お互いに干渉しないけれど、適度なつながりが感じられるコミュニティが形成されている。
新規に入居者が決まると、代表者が御主人の所に報告し、了解を得るという形で新規の入居者が決まっている。御主人もそれを良しとされて、リーダー格の人に任せておられる。昨年までは、藤森寮の始まりの当初から入居されている方がリーダーをしておられたとのこと。
部屋の改修も自由ではあるが、一応、退去する際には原状回復の義務はある。しかし、新規の入居者との合意があれば、そのまま入居してもよいという緩やかな賃貸条件となっており、これも新規の入居者が絶えない秘訣である。
既存の町家を残す意欲
鞍馬口通でいえば、この藤森寮、さらさ西陣、手打ち蕎麦かね井、かみ添え、うめぞの茶房、月光荘など町家活用のはしりの建物が並んで、鞍馬口通の空気感を形成している。月光荘は沖縄出身の方が沖縄の方向けに簡易宿泊所の経営を希望されました。そうすると沖縄の方が来られて、銭湯のお客様にもなっていただけるだろうということでお貸しした。
御主人は、この界隈で多くの物件(町家)を所有しておられるが、何とか活用していきたいと思っておられる。けれども、古い町家が今の若者の需要に合わないのではないかと懸念されている。町家の活用に意欲を持っている御主人と、町家を希望する若者との出会いの場を作っていくことが、京都らしいまちづくりの第一歩であると改めて強く認識した。