新大宮商店街の中に、少し赤みの強いベンガラを塗った可愛らしい外観の町家。
一瞬、何のお店だろうと思うと、絵本屋さんでしかもカフェです。
聞けば、ふたば書房の社長さんが二足の草鞋を履いて自ら店長をなさっています。
ふたば書房が絵本カフェを始めた訳
「本屋には毎日毎日、新しい本が入荷され店員もそのすべてを読むことは不可能です。唯一、本棚に並んでいるもののすべてを読んだことがあると言えるのは絵本だけなんです。売られている絵本の半分はロングセラーで、半分は新刊であり、半分だけなら読み切れるという事情があります。今日出た新刊でも、絵本であれば読み切ることができます。ですので、本屋として生きていくうえで、絵本の専門家ならなれます。それ以外は、出版社がつくった本をお客様に手渡すだけの存在となります。絵本に関しては、自分たちが自信を持って商品をお届けできると思ったことが切っ掛けの一つです。私自身、平成28年に京都で初めて、文部科学省が所管(独立行政法人国立青少年教育振興機構)している「絵本専門士」という資格を取得しました。それで、絵本屋さんをやろうと改めて決意しました。けれども、絵本に限らず、何かに専門特化した本屋というのはビジネスとしては成り立ちません。そこで、もう一つの収益源としてカフェを併設することとしたわけです」と店長は語る
大人のための絵本屋さんを目指して
「我々は、絵本を子どもにはもちろん、大人にも広げようと活動をしています。そのための切っ掛けづくりとして店づくりをしています。カフェもそのための装置です。町家であるのもそこを意識してのことです。その効果が少し出すぎたのか、地域の方が店の前まで来て「子どもの店ではないのね。子どもが何か調度品などを壊しそうで…」ということで勘違いして帰られる方もあります。一方で、絵本の持つ力は大人も癒してくれます。ママだけでなく女性のお客様のサードプレースになればよいなと思っています。生活の中の逃げ場、寛ぎの場であるだけでなく、絵本の力を借りて自分の新しい生き方、方向性が芽生えてくれたらいいなと思って「めばえ」と名付けました。特にママさんには5分だけでも寛いで自分を取り戻せる時間があればと思って、店の奥は、あえて土足にしませんでした。2階の座敷も授乳に使って頂いたり、子育て相談、自分磨きセミナー会場とするなど、少し休んでリスタートできる場所になればよいなと思っています。
新大宮商店街への出店
僕がこの地域の出身で中学、高校の時に遊んでいた故郷に戻ってきたというところです。同級生も多くいます。自分たちが子供の頃遊んでいたところに大人をターゲットとした絵本カフェを開きたいなと思っていた時にこの店と出会い、一目ぼれで決めました。社内はビジネスにはならないと全員反対でした。今も決してビジネスにはなっていませんが、ひじょうにさわやかな気持ちでお店の経営をさせてもらっています。いわゆる、ワークライフバランスとして成り立っているような気もします。仕事であり、趣味であり、地域貢献であり、これが本来の商売の原点ではないかと思っています。
新たなビジネスモデルとして全国に波及を!
ここがもう少し安定して収益が取れるようになれば、その成功モデルを全国に波及することができるのではないかと考えています。絵本を通して地域貢献しようとしている人たちのロールモデルになりたいと思っています。そして、それを成功させるためのポイントは立地だと思っています。このお店には、全国からお越しいただいています。わざわざ、この店を目指して来られます。けれども、地域のお客様との交流が少ないことも事実ですので、地域の方々に絵本の良さをどう伝えるかが使命だと思っています。他の絵本カフェとの違いは、絵本を見るだけでなく売っているということです。しかも、この店では新刊が売れ、ロングセラーのものはあまり売れていません。やはり、ロングセラーが売れているか否かが地域に根付いているか否かのバロメーターだと思います。そうして、きちんと利益を出せるノウハウを蓄積して、本屋さんの最終モデルとして育てていきたい。めざせ「めばえ100号店」です。