新大宮商店街に全面ガラス戸の店構え

いつでもだれでも受け入れるオープンな外観

多様な人が集い、育っていく場所

コミュニティカフェ新大宮

各所にコミュニティカフェはあるが、その実態は多様である。コミュニティカフェ新大宮は、カフェでもあり、日替わり店長のキッチンであったりレンタルスペースでもある。一番特徴的なことは、「こういうことをやってみたい」「こんなアイデアはどうやろ」など様々なやりたいことの相談に応じて、一緒に企画を作っていくことができる場所ということだとのこと。単に場所を貸すだけでなく、この場でやる企画を一緒になって考えていくことができる場所ということが一番のポイントである。

コミュニティカフェ新大宮の始まり

2007年か2008年に、この新大宮商店街と関わり始めた。当時、学生、若者と商店街の人達で一緒に作る「そらたね祭」というイベントが開催されていて、そのスタッフとして参加した。最も大きなイベントは、商店街の中にある唯明寺を借りてステージを作ってパフォーマンスをしたり、ガレージでマルシェを開催したり、商店街の路上でアート展示をした。商店街を舞台にして自分たちを表現したり、交流を図ってきた。

元々「そらたね」という活動は、この商店街にあった「こども工房」で和太鼓を教えていた立命館大学の学生が、子供たちの発表の場を商店街でできないかということで活動が始まり、片桐氏は第5回「そらたね祭」から参加をすることになる。片桐氏が生まれ育った場所に近かったということも、この活動に参加する一つの要因であった。

会場を提供していただいた唯明寺の住職さんは宇治高校の先生をしておられて、その宇治高校が立命館宇治高校になり、その過程で立命館の理事になられた。そのご縁で、学生たちの活動の場としてお寺を提供されたことが、新大宮商店街に若者たちがかかわるようになる契機となった。唯明寺は、お堅い寺ではなく、代々、仏教の教えを分かりやすく伝えることに尽力してこられたとのこと。明治時代に生きた先々代は、説教師といって、仏の教えを言葉に抑揚をつけ、落語とか講談のような話芸として面白可笑しく伝える存在であった。元々お堅いお寺ではなく、楽しんでもらいながら仏教の世界に親しんでもらうというお寺の成り立ちである。

この「そらたね」の活動の中で、新大宮商店街の中にスタッフが集まれる場所が欲しいということになり、この場所を借りてセルフリノベーションをして「新大宮みんなの基地」としてオープンしたことが始まりであった。

それから10年くらい経って、こうした活動をもっと発展させていきたいと思うようになる。また、片桐氏自身も、子供ができたこともあり、若者が集まる場所から親子で来れる場所としていきたいと思うようになる。

そして、2021年に再度リノベーションを行い、今の「コミュニティカフェ新大宮」が誕生した。

ちょうどコロナ禍の時で、若い人が集まりにくくなった時期であったが、かつて一緒に活動していた若者が大人になり、子連れで訪ねてくれるようになった。かつては、土足で上る設えであったので、子供が遊べる場所がなかった。それで、子供が靴を脱いで遊べる空間の方が来やすいし、子連れでおしゃべりをしたりすることができる場所になるのではと思うようになった。また、当時、オープンしていた新大宮広場に触発されたこともあり、レンタルキッチンができるような設えもあったら良いなと思っていた。それで、きちんとしたキッチンスペースを確保すると同時に、靴を脱いで上れる空間を作ることになる。

コミュニティカフェ新大宮の担い手

現在は、コミュニティカフェのスタッフが、平日の午前10時から午後4時まで常駐してカフェを運営したり、利用の相談に応じたり、子供服の交換コーナーの対応などを行っている。カフェを使ってやってみたいことの相談対応もスタッフが行っている。

スタッフは公募で募集しているが、カフェ運営だけでなく、地域との関りや相談対応に関心のある人が応募してこられる。曜日で担当スタッフは異なるが、結果として30歳代から50歳代くらいの年代の人が担い手である。時には20歳代のスタッフがいるときもあり、年代にこだわりはないとのこと。

コミュニティカフェ新大宮の今後

コミュニティカフェにしたことで来られる人の幅が広がったことが大きな変化であり、やって良かったと思うことである。また、こういう場所を運営している人でありグループだということが伝えやすくなったことも効果の一つである。関わってくれるメンバーもコミュニティカフェで仕事をするという方が、イメージをし易いし来やすかったのではないかと思っている。

そういう意味で、この場所は、こんなことをしてみたいという人たちが気軽に相談をして、実行に移すことを後押しできるような場所であり続けたいと思っている。そういう意味でも福祉的な場づくりという表現はしていないけれど、何かあった時に相談できるような緩やかな関係性ができれば良いと思っている。

趣味の一環としてカフェをやるというのではなく、市民活動として何かやっていく場所としてカフェを通じてむらさきエリアだけでなく西陣エリアが活かされていくことも増えていってほしいとのこと。

片桐氏自身は、育った場所も含めて西陣という場所のイメージが強いとのこと。新大宮商店街も西陣エリアの中の存在としてとらえている。少し古い時代の職人の町の雰囲気を生かしながらの町がつくられている。新大宮商店街も西陣の職人さんたちが周辺に住んでいて、そういう人たちが買い物をするということで始まった商店街である。

起業したいという人が、このエリアに関わったことをきっかけとして、このエリア以外であっても、それこそ京都以外でも新しい活動を始めるなどの広がりが生まれてほしいとのこと。

実際に、ここから育った人が様々な事業を展開している。例えば、京都で4~5台の車を走らせてSNSで焼き芋を販売している人や、堀川商店街で図書館をやっている人、御所西でこもれび書店をやっている人も、ここのスタッフであり、ここでノウハウを学んで起業をしている。この場での経験を契機に新しい活動が生まれている。そういう場であり、エリアであり続けたいし、そおことが面白いと思っている。

むらさきエリアの今後

全国にこのエリアにゆかりの店や事業者が増えることも面白いと思うとのこと。そして、このエリアとの関係人口となり交流人口としてこのエリアに帰ってくることも新しいあり方ではないかと思う。

このエリアで育ち、他の地域で新しい事業が行われていることにより、いろいろな可能性や方法論に関わる新しい情報の入り口となることが期待できる。このエリアで行われているいろいろな活動がいろいろなかかわりを増やすきっかけとなって欲しいとのこと。

そういう意味では、市議会議員である片桐氏の取組の一環であるとも言えるが、市議会議員としてだけの位置づけで行っている活動でもない。

人と人の関係性が強いこのエリアでの活動の経験が、いろいろの場所で花開くことが翻ってこのエリアに還元されることが期待されている。

いわゆる地縁型のコミュニティだけではなく、共通の価値で人と人が繋がるコミュニティというものが形成される時代になってきているという認識を持っているとのこと。地域コミュニティと人と人が共通の価値観でつながるコミュニティが重なることによってより豊かなコミュニティが形成されるのではないかと考えている。

コミュニティカフェ新大宮は、そうした新しい紐帯を作っていく方法の一つとして取り組んでいるとのこと。そして、新しく創られた移動型のカフェ屋台も、コミュニティカフェ新大宮の価値発信のツールとして活躍していくことが期待される。

片桐氏からは、むらさきエリア発の活動や価値観がエリア外に広がることで、さらにエリアが豊かになり、力を持つことの強い示唆を得ることができた。「むらさきエリア」におけるコミュニティカフェ新大宮の取組に注目をしていきたい。

基本情報

■コミュニティカフェ新大宮

  • 住所   〒603-8223 京都市北区紫野上門前町21
  • 電話   075-200-9296
  • 交通   京都市バス「大徳寺前」より徒歩7分程
  • 定休日  土曜、日曜、祝日(最新情報はHPよりご確認ください)
  • 営業時間 原則 平日10:00~16:00(最新情報はHPよりご確認ください)
  • URL   https://cc-shinoomiya.com/